エルメス車の正体とは?超希少な特注モデルの内装と驚愕の価格
ラグジュアリーブランドの最高峰として君臨するエルメス(Hermès)が手がけた「車」が存在するという噂は、SNSや車愛好家の間で度々熱い議論を巻き起こしてきました。結論から言えば、エルメス自身がエンジンやシャシーを製造する自動車メーカーになったわけではありません。しかし、世界最高峰の自動車メーカーとタッグを組み、内外装のすべてにメゾンの美学を注ぎ込んだ「エルメス車コラボ」によるワンオフモデルや極少数限定車は確実に実在します。
1837年に高級馬具工房としてパリで創業したエルメスにとって、馬車から自動車へと移り変わったモビリティの歴史は、メゾンのレザー職人技(クラフトマンシップ)を進化させてきた原点そのものです。本稿では、ロールス・ロイスやブガッティ、パガーニといった世界最高峰のハイパーカーと融合した幻の名車たちの全貌、一般には明かされない内装カスタムの秘密、そして数億円から十数億円に達する驚愕の価格やオーナー像について、徹底的に検証・解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:エルメスの車は単なる市販車ではなく、ブガッティやロールス・ロイスらと共作した世界に数台規模の「特注ワンオフモデル」が中心。
- 要点2:前澤友作氏が特注した「ロールス・ロイス ファントム織部」やマニー・コシュビン氏の「ブガッティ シロン」など、価格は数億円〜十数億円に達する。
- 要点3:耐候性・耐熱性を極限まで高めた専用のエルメスカーレザーと伝統の手縫い技術が、走る芸術品としての圧倒的価値を創出している。
【噂の真相】エルメス製の車は実在するのか?名門メゾンの特注部門が放つ衝撃
ネット上で囁かれる「エルメス製の車が発売された」という情報の真相は、エルメスの特注・ビスポーク部門である「ル・シュル・ムジュール(Le Sur-Mesure)」などが手がける、超高級自動車メーカーとのオフィシャルコラボレーションおよびワンオフ(1点もの)製作プロジェクトを指しています。
エルメスは、自社で車両の量産ラインを持つことはありません。しかし、顧客が愛用する航空機、ヨット、クラシックカー、あるいは最新のハイパーカーの内装空間を最高級レザーで誂えるカスタム事業を古くから展開してきました。とりわけ2000年代以降、自動車史に名を刻むスーパーカーメーカー各社と正式に手を組み、メーカー公認の「高級外車エルメス仕様」として世に送り出した歴史的なマスターピースが複数存在します。
これらは単にシートを張り替えただけの社外カスタムとは根本的に異なります。設計初期段階からエルメスのデザイナーやアーティスティック・ディレクターが自動車メーカーの開発チームと直接対話し、塗料の調合からグリルデザイン、レザーの鞣(な)まし、ステッチのピッチに至るまで完全共同で創り上げるため、美術品としての登録価値を持つ「真のワンオフモデル」として扱われます。

世界を震撼させた究極のワンオフモデル|前澤友作氏のロールス・ロイスからブガッティまで
これまでに誕生したエルメスワンオフモデルおよび特別仕様車の中でも、特に自動車史・デザイン史において突出した評価を受ける代表的な名車を紐解きます。
1. ロールス・ロイス ファントム織部(Phantom Oribe)|前澤友作氏が共同創造した日本の美意識
実業家の前澤友作氏がロールス・ロイスとエルメスにオーダーし、2021年に公開されたビスポークモデルが「ロールスロイスエルメス織部」です。前澤氏が収集する安土桃山時代の古陶磁器「織部焼」から着想を得た深緑とクリームの特注ツートンカラー「MZ Oribe Green」を開発。内装はエルメスのアイコニックな「エネア・グリーン(Enea Green)」の上質なレザーで包み込まれ、ステアリングホイール、ギアセレクター、ダッシュボードのウッドパネルにはエルメスのスカーフ(カレ)の図案を手がけたピエール・ペロンのイラストをもとにした手彫りの寄木細工が施されました。まさに東西の最高峰クラフトマンシップが融合した歴史的傑作です。
2. ブガッティ シロン エルメス(Chiron habillé par Hermès)
アメリカの不動産王であり世界的なスーパーカーコレクターであるマニー・コシュビン氏の熱烈なリクエストにより、約3年の歳月をかけて完成したのが「ブガッティシロンエルメス」です。車体色はエルメスのアイコニックなチョークカラー「クレ(Craie)」で統一され、フロントの馬蹄形グリルにはエルメスの「H」モチーフがレーザーカットで刻まれています。内装にはクレカラーのレザーに加え、エルメスの伝統的な馬柄ファブリック「クールベット(Courbettes)」のカシミアウールが贅沢にあしらわれ、ハイパーカーの暴力的な性能(1500馬力)とメゾンの気品が見事な調和を見せています。
3. パガーニ ウアイラ エルメス・エディション(Huayra Hermès Edition)
同じくマニー・コシュビン氏がオーダーした「パガーニウアイラエルメス」は、イタリアの芸術的ハイパーカービルダーであるパガーニとエルメスが初コラボレーションした伝説の1台です。チョコレートブラウンのフルカーボンボディに、エルメスオレンジを彷彿とさせる最高級レザーを組み合わせ、シフトノブやベンチレーションの細部まで専用のレザーワークが施されています。付属するラゲッジセットも車体と完全同一のレザーで仕立てられました。
4. シトロエン 2CV エルメス&スマート エルメス・エディション
ハイパーカーだけでなく、日常のアイコニックな名車を仕立てた例もあります。2008年のパリモーターショーで公開された「シトロエン2CVエルメス」は、名車2CVの生誕60周年を記念して製作されたオフィシャルワンオフモデルで、ナチュラルレザーの内装とトワル地(キャンバス)のソフトトップを備え大きな話題を呼びました。また、同年に限定発売された「スマートエルメスエディション(smart fortwo)」は、トワルH(アッシュ)キャンバスと上質なカーフスキンを纏い、10色展開で少数販売された極めて珍しい市販コラボレーションモデルです。
【価格・スペック比較】歴代エルメスコラボ車のスペックと驚愕の市場価値
エルメスが関わった主要モデルの基本スペック、推定価格(エルメス車値段)、および特徴的な仕様を以下の比較表にまとめました。
| モデル名 | ベース車両・スペック | 推定価格・市場価値 | エルメス特注・内装の特徴 |
|---|---|---|---|
| ロールス・ロイス ファントム 織部 | Phantom VIII Extended 6.75L V12 ツインターボ(571ps) | 推定 3億〜5億円以上 (ワンオフ非公開) | エネア・グリーンの特注レザー、ピエール・ペロン原画の寄木細工、織部焼モチーフの専用ペイント |
| ブガッティ シロン エルメス | Chiron 8.0L W16 クアッドターボ(1500ps) | 推定 6億〜8億円以上 (ベース約3.5億円+特注費) | 専用色クレ(Craie)、Hグリルメッシュ、クールベット柄カシミアウール内装パネル、専用トランク一式 |
| パガーニ ウアイラ エルメス | Huayra 6.0L V12 ツインターボ(730ps) | 推定 7億〜10億円以上 (現在のオークション査定) | 特注ブラウンフルカーボン、エルメス専用レザー内装、シフトノブ手縫い仕上げ、専用ラゲッジ |
| ブガッティ ヴェイロン Fbg par Hermès | Veyron 16.4(2008年) 8.0L W16 クアッドターボ(1001ps) | 約2億8,000万円 (発売当時定価・現在プレミア化) | ガブリエル・ペッチーニ監修、ヴォー・クリスペ・カーフスキン、H形状アルミホイール |
| スマート フォーツー エルメス | smart fortwo(2008年) 1.0L 直列3気筒(71ps) | 約650万円 (当時€48,000 / 限定販売) | トワルHキャンバス×トリヨンレザー内装、手縫いステアリング、専用グローブボックス仕様 |

エルメス内装カスタムの真髄|最高峰レザーが放つ芸術性とクラフトマンシップ
一般的な自動車メーカーの高級本革シートと、エルメス内装カスタムに用いられる仕立てとの間には、決定的な違いが存在します。それは「素材の選定基準」と「手縫いの技法」です。
極限環境に耐えうる「エルメスカーレザー」の開発
エルメスのバーキンやケリーに使われる極上レザー(トリヨン・クレマンス、トゴ、ヴォー・バレニア等)は、本来デリケートな水分や直射日光を避けるべき天然皮革です。しかし、車内環境は真夏には70℃以上に達し、強力な紫外線(UV)と急激な温度変化にさらされます。
エルメスの特注部門では、メゾン特有のしっとりとした手触りや深みのある芳香を維持しながら、耐候性・耐摩耗性・防炎性の国際自動車基準を完全クリアする特殊な鞣し工程と染色技術を確立しています。これにより、何十年乗り続けても色褪せず、使い込むほどに艶を増す奇跡の「エルメスカーレザー」が完成します。
伝統の「クウジュ・セリエ(サドルステッチ)」の移植
馬具工房時代から継承される2本の針を交差させて縫い上げる「クウジュ・セリエ(サドルステッチ)」は、機械縫いと異なり、たとえ1箇所の糸が切れても連続してほつれることがありません。ステアリングホイールやダッシュボードの接合部には、熟練の革職人が数日間かけてひと針ずつ手作業で縫い込む伝統技法がそのまま注入されています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
エルメス仕様の車に関して、インターネット上ではしばしば事実と異なる情報が流布しています。ここでは代表的な誤解を是正します。
- 誤解1:エルメスの店舗に行けば愛車の内装張り替えを依頼できる?
完全な誤りです。街のエルメスブティックで自動車の内装オーダーを受け付ける窓口はありません。エルメスの「ル・シュル・ムジュール」部門は、メーカーとの公式提携案件や、メゾンと長年深い信頼関係を築いた限られたVIP顧客の特別プロジェクトのみを厳格な審査のもとで受託しています。 - 誤解2:市販の社外品エルメス風レザーでカスタムすれば価値が上がる?
むしろ車両の資産価値(リセールバリュー)を下げるリスクがあります。エルメスの商標やレザーパターンを模倣した非公認の張り替えは、知的財産権の侵害に当たるだけでなく、正規のオークション市場では「オリジナル性を損なった改造車」と見なされ大幅な減額対象となります。 - 誤解3:エルメスの車は実用性が低く走れない?
前澤氏のロールス・ロイスもコシュビン氏のブガッティも、すべて各国の保安基準に適合した「完全なナンバー取得車両」です。工芸品としての繊細さを持ちながら、ベース車両のハイパフォーマンスを100%発揮できるよう緻密に熱力学・安全設計がなされています。

【富裕層心理と記号論】なぜ超富裕層は億単位を投じてエルメス仕様を求めるのか
ブガッティやロールス・ロイスは、それ単体でも数億円の価値があり、富と成功の象徴です。それにもかかわらず、なぜ世界のトップコレクターたちは数年の歳月とさらなる巨額の資金を投じてまでエルメスコラボを熱望するのでしょうか。
社会学者ソースティン・ヴェブレンが提唱した「顕示的消費」の現代的進化として、この現象は読み解くことができます。誰もが知る既製品のスーパーカーを購入する行為が「第一段階の富の誇示」であるとすれば、メーカーの枠を超えて歴史的文化財(メゾン)のクラフツマンシップを動員し、世界に1台だけの空間をゼロから共創することは「自己の美意識と文化的教養の具現化(文化的資本の証明)」に他なりません。
前澤友作氏が織部焼という日本古来の美意識をロールス・ロイスとエルメスに託したように、所有者は単に車を買っているのではなく、「自身が歴史の一部となるアートピース」を創造しているのです。この「文化的正統性(レジティマシー)」こそが、エルメス車コラボが他のどんな限定車よりも圧倒的なオーラを放つ理由です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
エルメス仕様の車や超高級ビスポークの世界とどう向き合うべきか、客観的な基準を提示します。
- 向いている人(目指すべきコレクター):
- 単なる乗り物のスペックではなく、職人の手仕事や工芸的文脈、美術史的価値に深い敬意を払える人。
- オーダーから納車まで3〜5年以上の長期にわたるディスカッションプロセスそのものを楽しめる人。
- 投機目的ではなく、文化遺産として後世に保存・継承する覚悟と資産規模を持つ人。
- 慎重になるべき人(安易な模倣を避けるべき人):
- 非公認のショップで「エルメス風ロゴ」や「パチモノの生地」を使った内装カスタムを検討している人(ブランド価値の毀損および法的リスク)。
- 短期的な転売益やSNSの映えだけを目的に高級車のレザー張り替えを考えている人。
【エルメス 車】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:一般の個人でもエルメスに車の内装カスタムをオーダーすることは可能ですか?
A1:極めて困難です。エルメスのビスポーク部門(ル・シュル・ムジュール)は、メゾンの最上顧客(トップVIP)や公式な自動車メーカーとのアライアンスに限定してプロジェクトを請け負っています。まずはエルメスとの長期的な信頼関係の構築と、数億円規模の予算、そしてメゾン側が製作意義を認める明確なコンセプトが求められます。
Q2:日本国内でエルメスコラボの車を見る機会はありますか?
A2:前澤友作氏が所有する「ロールス・ロイス ファントム織部」などは、稀に美術展やスーパーカー関連の特別チャリティイベント、公式動画などで公開されることがあります。また、過去に限定発売された「スマート エルメスエディション」はごく少数が国内の中古車市場やコレクターの手元に現存しています。
Q3:スマートのエルメスエディションの中古車相場はいくらくらいですか?
A3:2008年当時は約600万〜700万円で販売されましたが、生産台数が世界で極めて少ないため、中古車市場に出回ることは稀です。状態の良い個体がコレクターズオークション等に登場した場合は、当時の新車価格と同等以上のプレミア価格で取引されるケースが見られます。
まとめ:究極のクラフトマンシップが示すモビリティの未来像
自動車が単なる移動手段から電動化・自動運転化へと急速にシフトする現代において、エルメスが手がける車たちが見せる「人間の手仕事による極限のクラフトマンシップ」は、これまで以上に眩い輝きを放っています。
馬具工房から始まったエルメスの魂が、ブガッティやロールス・ロイスという現代の最高峰モビリティと出会うことで生まれた数々のワンオフモデル。それらは単なる「高級車のカスタム」という枠組みを遥かに超越した、21世紀の走る文化遺産として、これからも世界中の自動車ファンとアート愛好家を魅了し続けることは間違いありません。 (出典: エルメス 車(Yahoo!ニュース))